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最高裁判所第二小法廷 昭和31年(あ)2416号 決定 1960年1月11日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人岡田善一の上告趣意について。

所論は単なる法令違反または事実誤認の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。のみならず仮に本件不動産が被告人の所有に属するものであったとしても、被告人はかねてから米谷一良の印鑑を保管していたのを奇貨とし、同人の承諾がないのにこれを同人から被告人に売却した旨の売渡証書を作成してこれを原因とし、且つ自ら作成した米谷一良名義の委任状を利用し、自己に所有権の移転を受けた旨虚偽の登記申請をし登記簿の原本にその旨の記載をなさしめたものであるから、その所為が刑法一五七条一項に該当することは明らかである。なお論旨引用の大審院判例は本件に適切でない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田 克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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